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(仮称 2026年4月設置予定)

宮田裕章(飛騨高山大学(仮称)学長候補)×(一社)飛驒高山大学設立基金 理事会 × 水野学(good design company代表)

【座談会】飛騨から文明をつくる ? ! 地域からはじまる新しい共創(学長候補・宮田裕章氏×理事会×水野学氏 )

2024年開学を目指す飛騨高山大学(仮称)の学長候補である宮田裕章氏と、大学をともにつくり上げている理事会メンバーとの座談会を行いました。なぜ飛騨に大学をつくるのか、どのような学びを通じて新しい社会を共創しようとしているのか。壮大なビジョンの一端を覗いてみてください。

大学は利害関係を超える共創できる場所

井上代表理事(以下井上) 宮田さんに学長候補をご相談させていただきたいと感じた背景には、宮田さんの書籍を読んだときに、「新しい社会像をつくる」「文明をつくりたい」という強い意思を感じたからです。本校設置予定地の岐阜県飛騨市は人口減少・課題先進地であり、今後の地域の未来を映しています。一人一人が輝く新しい社会像(文明の発祥地)という考え方が持ち込まれると、この土地から凄いことが起きるんじゃないかと直感的に思いました。



宮田裕章(以下宮田) 私の目標として「文明をつくりたい」というのがあるんですが、文明ってどう考えても一人じゃつくれないじゃないですか(笑)。それに今まで「文明」というものは結果論としてできたものでした。そろそろ我々の意思で意図的につくり出す文明があってもいいんじゃないか、それがどういう人たちと一緒にできるかなと考えたときに、今回すばらしい人たちと出会えて良かったなと思っています。飛騨高山大学(仮称)の話を伺ったとき、「これは新しい時代をつくれるんじゃないか!」とも感じました。ただ、熱量が必要な言葉なので、テンションが上がったときにしか「文明」のことは言わないんですよ。普段言ったら「どうした?」って顔されるので(笑)。

一同 (笑)

川戸理事(以下川戸) 改めてお聞きしたいのですが、井上さんはなぜ飛騨に大学をつくろうと思ったのですか?



井上 高校時代から、生まれ育ったこの地域にぼやっとですが大学があるべきでは、そしてつくりたいなと思っていました。実は初めは大学設立のために政治家になろうと考えていたんですが、政治家の道を垣間見る中で、手段として政治家ではないと感じるようになりました。

そんな中、理論と実践を往復すべきとの大学の先生の教えもあり、ビジネスをしながら学生生活を送るうちに、大学という場所は利害関係を超えて共創できる場所だと感じるようにもなりました。普通の地域の場づくりでは利害関係でしかなかなか動かない側面をよく見ます。それらの経験からも、「教育を通じて地域は変わっていくのではないか」「地域で教育をしたい」という思いが「つくりたい」から「つくろう!」に変わりました。

水野学(以下水野) 私は文明と文化が密接な関係にあると考えていて、文明は文化を引き連れていくときに興隆するんですよね。宮田さんや井上さんのお話を伺っていて、文化も一緒につくることができると良いんじゃないかなと思いますし、すでに内包されているとも感じています。宮田さんのおっしゃる文明には、文化が背景にある。飛騨高山という地域ととても合致しますよね。だからこそ、飛騨高山大学(仮称)の取り組みは魅力的だと思います。



大学に関してもう一つ、「アカデミック」という言葉があまり良い使われ方をしない世の中になってしまったと感じていて、それはすごく悲しいことだと思います。「フィロソフィー(哲学)」は「知を愛する」が語源になっていますが、哲学を持ってアカデミックに生きていくことはすばらしいことなのに、一部の教育機関では「入学すればいい」「卒業すればいい」というような状況になってしまっているのはもったいないとも感じます。

宮田 確かに日本の衰退の一因として、大学がずっと高校4年生のような、モラトリアムの延長になっている現状が挙げられます。入学というステータスがあって、4年間の学びが考慮されていません。昔はそれで良かったかもしれませんが、この4年間をもっと学生の可能性を伸ばす形にできれば、日本の可能性ももっと開いていくと思います。だからこそ、大学教育にはまだまだ可能性があるんじゃないかなという気がします。

経済・工学・芸術の学問領域は、地域にどのような価値をもたらすのか

井上 学べる領域として構想しているのは、経済・工学(まちづくりやデータサイエンス等)・芸術などです。これらの学問領域が持つ意味合いや、地域にとってどんな影響や価値をもたらしていくのか、改めて宮田さんにお聞きしたいです。

宮田 新しい社会をつくることを考えたときに、カテゴライズはあれど基本的にはどの学問も混ざり合っているんですよね。これまで経済は狭義の学問でしたが、そうではなく、持続可能な未来をどうつくっていくのか、それをデザインする中で人々がともに集いながら経済を回していくための仕組みづくりが経済です。そこに集った人たちの繋がりをアートでデザインすることでさまざまなコミュニティが生まれてきます。

そして、テクノロジーを扱う工学は多層的なコミュニティを繋ぐフィジカルな場を創造していくものです。それぞれが不可分に連携していくと考えています。ジャンルは色々あるんですけれども、学ぶ側は全部学ばないとこれからはサバイブできないですよね。だからこそ、開学時から3つの軸が一体となった教育をすることが大事になります。時代の変化の中で新しい分野をさらにつくっても良いと思います。



鈴木理事 個人的に、経済学というと資本主義や経済合理性、貨幣経済のような印象があります。飛騨高山大学で学ぶ経済は持続可能な未来の仕組みづくりといった、これまでとは違うイメージで伝えていけるといいですよね。

宮田 確かにそうですね。

水野 先ほど経済を回していくための人の繋がりをアートでデザインしていくという話がありましたが、アートに対する日本人の感覚はずれていると感じることがあって、そこが最近気になっています。もともとアートはものづくり全般を指していました。例えば、宗教画は宗教を広めるためなど、機能を持ってつくられていたんですね。美術館に飾られるためにつくるという考え方はなかったわけです。装飾的なことをデザインと捉えがちですが、実はそうではなくて機能と装飾に分類できます。

アートはテクノロジー・サイエンス・経済などと渾然一体となって世の中に存在するべきですが、実際は切り離されている。今の時代は“STEAM教育”(※)のように、アートが経済をドライブしていく上で、飾りとしてのアートでなく、機能としてのアートが必要とされてきています。

※STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象に、分野を横断的に学ぶ教育理念。


宮田 飛騨の匠はまさにアートですよね。

水野 そうですね。工芸というと“職人”というイメージですが、自然と人がつくり出すという意味でとてもサステナブルなアートなんですよ。だからこの飛騨高山の地で、機能としてのアートができるということに意味があると感じます。



川戸 また別の視点で、最後に一言。普段自然エネルギーの仕事をしていて感じるんですが、風力発電事業に頭では賛成してくれていても、近くに風車が立って音がうるさいと感情的に受け入れられないということがあります。その際に、合理的に説明をして反対する理由をなくすというアクションではなく、好きになってもらうというアプローチが必要になります。風力発電であれば、「夕日に照らされた風車がある景色はとても美しいですよね」というアプローチが考えられます。

頭だけで考えるのではなく、「わくわく」「好き」と言う気持ちがあって始めて変化に対応できるようになるのかなと感じます。そういったことを発信する場としても、飛騨高山大学(仮称)が一つの象徴になればいいなと思います。

飛騨高山大学(仮称)学長候補宮田 裕章
1978年岐阜県生まれ。2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座助教を経て、2009年4月同准教授、2014年4月同教授(2015 年 5 月より非常勤) 、2015年5月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授。専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。2025日本万国博覧会テーマ事業プロデューサーをはじめ多様な社会活動に携わる。地域とともに創る新しい未来のイメージについては今後SNSなどを含め様々な媒体で発信していく。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 代表理事井上 博成
平成元年(1989年)生まれ。岐阜県高山市出身。東日本大震災をきっかけに地域の新しい価値を感じ、出身地である高山市と京都大学との間で2014年~自然エネルギーに関する研究開始をきっかけに高山市へ戻るようになる。京都大学大学院経済学研究科博士課程研究指導認定退学。主な研究領域としては自然資本と地域金融。自然エネルギーを研究⇔実践する中で、小水力では、飛騨高山小水力発電㈱を設立(2015年)し全国各地で小水力の事業化を行うようになる。木質バイオマスを研究する中でエネルギー利用のみならず、木材そのものの利用に高い関心を持ち、飛騨五木㈱(2015年)の立ち上げや、金融視点から東海地方で当時唯一の管理型信託会社である、すみれ地域信託㈱(2016年)の設立など理論と実践とを日々往復している。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 理事川戸 健司
自然電力株式会社代表取締役。 大学卒業後、風力発電事業会社に就職。その後、東日本大震災をきっかけに「エネルギーを通して社会課題を解決していきたい」という想いで2011年6月に自然電力株式会社を設立。「青い地球を未来につなぐ」を会社のPurpose(存在意義)とし、日本だけでなく南米、東南アジア等においても再生可能エネルギー事業を行う。 特に今後は、再生可能エネルギーを通して世界中のLocal(地域)を繋ぎ、新たな価値を生み出すネットワークを創ること、そして未来への再投資を行う新たな資本循環の仕組みを構築すること を目標に掲げ、日々活動している。 1980年、千葉県生まれ。開成高校、慶應義塾大学理工学部卒業。
一般社団法人 飛驒高山大学設立基金 理事鈴木 興太郎
300年以上続く老舗木材会社の跡取り候補(13代目)として1987年、名古屋市で生を受ける。2011年慶應義塾大学法学部卒業。大学卒業後は専門商社に入社し北米やヨーロッパからの建築資材輸入業務を主に5年間勤務。2016年、家業である材惣木材株式会社に戻り、2020年同社、常務取締役就任。 木材流通業や木材加工業など日々の業務かたわら、グループの協力体制強化にむけたHD体制の確立、環境に配慮したZEBビル建設、M&Aでの事業譲受にも携わる。日本木材青壮年団体連合会の59代会長を務めるなど、業界活動にも力をいれ、「木材業界の発展を通じた、よりよい社会の建設」に向けて不屈の精神をもって奮闘中。
good design company代表水野 学
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。1972年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1998年 good design company 設立。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリア、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手掛ける。主な仕事に、相鉄グループ、熊本県「くまモン」、三井不動産ロゴ、JR東日本「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」ほか。2012-2016年度 慶應義塾大学環境情報学部(SFC)で特別招聘准教授を務める。国内外で受賞歴多数。著書に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)、山口周氏との共著『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(朝日新聞出版)ほか。

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